司法書士から企業法務へ転職できる?未経験で上場企業法務に内定した実体験

企業法務

司法書士事務所で働いているけれど、このまま何年も続けていいのか分からない。

最初は独立志望だったけれど、家族や収入のことを考えると、今の状況で独立に踏み切るのは不安。

企業法務に興味はあるけれど、司法書士の実務経験しかない自分でも転職できるのか。

そんな悩みを持っている若手資格者は、意外と多いんじゃないでしょうか。

自分は司法書士事務所で2年半働いた後、未経験から上場企業の法務へ転職しました。

転職活動では8社に応募し、内定は1社だけ。結果的に、その1社が第一志望の企業でした。

現在は転職1年目。司法書士事務所時代と比べて、年収は約420万円から約680万円へ上がり、繁忙期には月80時間を超えていた残業も、現在は月10時間未満になりました。

ただし、司法書士資格があれば簡単に企業法務へ転職できる、という話ではありません。

司法書士業務と企業法務では仕事内容がかなり違います。自分の転職も、実質的には未経験職種へのキャリアチェンジでした。

この記事では、なぜ司法書士事務所を辞めて企業法務を目指したのか、選考で何が評価され、何に苦戦したのか、転職後の働き方がどう変わったのかを本音で書きます。

20代を閉鎖的な環境だけで過ごすことに危機感があった

企業法務への転職を考えた一番の理由は、20代という貴重な時期を、司法書士事務所という閉鎖的な環境だけで過ごすことに危機感を覚えたからです。

自分がいた事務所では、決済業務や相続業務を中心に、毎月似たような仕事を繰り返していました。

もちろん、登記業務を深く追究し、司法書士として専門性を高めていく道もあります。

ただ、自分の場合は、このまま同じ環境で働き続けた先に、仕事の幅が広がっていくイメージを持てませんでした。

司法書士業務は、もっと年齢を重ねてからでもできます。

資格がなくなるわけではありませんし、司法書士事務所へ戻る道や、独立する道も残っています。

一方、未経験から民間企業の法務へ転職するチャンスは、年齢を重ねるほど少なくなると考えました。

それなら、動けるうちに一度外へ出てみたほうがいい。

司法書士事務所の中だけでキャリアを完結させず、民間企業でも通用する経験を積みたいと思うようになりました。

家族を守るため、もっとお金と時間がほしかった

もう一つの大きな理由が、子どもが生まれることでした。

当時の事務所では、ボーナスが支給されるかどうかは所長の判断次第。求人票には超過分の残業代を支給すると書かれていましたが、実際には支給されませんでした。

少なくとも、自分が働いていた小規模事務所では、これが現実でした。

繁忙期には月80〜100時間ほど残業することもあり、土日に本人確認へ行くこともありました。

自分一人であれば、多少無理な働き方でも耐えられたかもしれません。

でも、これから家族を守っていくと考えたときに、収入も労働時間も経営者の判断一つで変わる環境は、さすがに厳しいと思いました。

給与が高いか低いかだけではありません。

数年後の年収をある程度予測できること、休日に家族と過ごせること、必要なときに休めること。

こうした当たり前の安定性が、家族を持つうえでは重要だと感じました。

「今の環境で、本当に家族を守れるのか」

そう考えたことが、転職を決断する最後の一押しになりました。

新卒4年目での未経験転職には焦りがあった

企業法務への転職活動を始めたのは、新卒4年目の時期でした。

一般的な職種であれば、まだ若手として扱われる年齢だと思います。

ただ、法務は専門性を求められる部門です。

企業法務の実務経験者と比較される中で、司法書士事務所の経験しかない自分は、実質的には未経験者でした。

「未経験から法務へ移るなら、年齢的に今がギリギリかもしれない」

そんな焦りがありました。

司法書士事務所でさらに数年間働いてから転職しようとしても、年齢は上がります。一方で、企業法務に直接つながる経験が増えるとは限りません。

だから、完璧な準備が整うのを待たずに応募を始めました。

転職活動では8社に応募し、内定は1社。

結果的に、その1社が第一志望の企業でした。

数だけ見れば順調に見えるかもしれませんが、ほかの7社では選考を通過できなかったということでもあります。

司法書士資格があれば、どの企業からも評価されるわけではありませんでした。

選考で評価されたのは、登記実務より年齢と学習能力だった

企業法務の選考で、司法書士事務所の実務経験がそのまま評価されたかというと、正直、そこまでではありませんでした。

司法書士業務と企業法務では、扱う仕事がかなり違います。

決済や相続登記の経験が、そのまま企業の契約書審査やコンプライアンス業務に使えるわけではありません。

むしろ評価されたと感じたのは、次の2点です。

  • 未経験から育成できる年齢だったこと
  • 短期間で司法書士試験に合格したこと

司法書士資格そのものが、企業法務の即戦力として評価されたというより、「難関試験に合格できるだけの学習能力がある」という証明になった感覚です。

司法書士試験で勉強した民法や商法の基礎知識も、企業法務へ移るうえで役立ちました。

一方、登記実務だけを強くアピールしても、企業側には刺さりにくいと思います。

司法書士資格を持っていることだけではなく、その過程で身につけた法律知識や学習能力を、企業でどう生かせるのか。

そこまで説明することが重要でした。

激務の中で面接対策をするのが一番きつかった

転職活動で苦戦したのは、司法書士事務所で働きながら面接対策を進めることでした。

繁忙期には残業が多く、仕事が終わって帰宅する頃には、面接対策をする気力がほとんど残っていません。

それでも、企業法務は未経験です。

かき集めた想定質問をスプレッドシートにまとめて、夜な夜なAIと壁打ちしながら面接対策をしていました。

実際に準備したのは、次のような質問です。

  • なぜ司法書士を辞めるのか
  • なぜ独立しないのか
  • なぜ企業法務なのか
  • 司法書士事務所での経験を企業でどう生かすのか

こうした質問に対して、筋の通った回答を用意する必要がありました。

単に「残業が多い」「給料が低い」と話すだけでは、前職への不満に聞こえてしまいます。

自分の場合は、司法書士事務所を否定するのではなく、20代のうちに民間企業でより幅広い経験を積みたいことや、法律知識を登記以外の分野でも生かしたいことを説明しました。

面接対策については、実際に準備した質問や回答も含めて、別の記事で詳しく書く予定です。

激務を続けながら転職活動をするのは、普通にきついです。

だからこそ、限界になるまで我慢する前に動いたほうがいいと思います。

限界まで働き続けると、気づいたときには年齢や家庭の事情で身動きが取りにくくなり、いつの間にか資格に喰われます。

転職後、一番驚いたのは「環境の差」だった

転職して最初に感じたのは、同じ人間でも、所属する環境によって待遇や働き方がここまで変わるのか、ということでした。

司法書士事務所時代の年収は、退職時で約420万円。

現在の上場企業法務では、初年度から約680万円となり、その後さらに約30万円のベースアップがありました。

これは、自分の能力が転職した瞬間に急上昇したからではありません。

企業側の給与水準や評価制度が違うだけです。

前の事務所では、ボーナスが出るかどうかも不安定でした。

現在の会社では、会社側が報酬を社員のモチベーションや定着に関わるものとして考えていることが伝わってきます。

当たり前のように聞こえますが、自分にとっては大きなギャップでした。

残業は月80時間以上から10時間未満になった

働き方も大きく変わりました。

司法書士事務所では、繁忙期に月80〜100時間ほど残業していました。

エンドレスに書類を作って、ひたすらチェックする。精神的にもきつい作業です。

しかも残業代が出なかったため、家族に対する気まずさもありました。

現在の残業時間は月10時間未満で、少ない月は5時間未満。ほとんど定時で帰れています。

休日出勤もありません。

以前は土日に本人確認が入り、片道1時間以上かかる場所へ行くこともありました。

現在は休日を家族との時間に使えます。

年収が上がったこと以上に、自由に使える時間が増えたことのほうが、生活への影響は大きかったかもしれません。

トイレ掃除をしなくていいことにも驚いた

地味な話ですが、転職後に驚いたことの一つがトイレ掃除です(笑)。

司法書士事務所では、所員が朝早く出勤して、自分たちで事務所やトイレを掃除していました。

現在の会社では、清掃を担当する方がいます。

もちろん、自分たちで掃除をすること自体が悪いわけではありません。

ただ、専門職として採用された社員が、本来の仕事とは関係のない業務まで当たり前に抱えている環境と、業務ごとに役割分担されている企業では、生産性に対する考え方がかなり違うと感じました。

「そこに驚くのかよ」と思われるかもしれませんが、こういう小さな違いの積み重ねが、働きやすさにつながっています。

休みを取ることへの心理的な負担も減った

司法書士事務所時代は、人員が少ないこともあり、休むと周囲へ直接負担がかかります。

休むにも毎回理由が必要で、「全休ではなく半休にしてくれ」などと、いちいち交渉されるのもストレスでした。

そのため、有給休暇の制度があっても、心理的には取りづらい環境でした。

現在は組織として業務を分担できるため、以前より休みを取りやすくなりました。

子どもが生まれると、家庭の事情で急に休まなければならないこともあります。

そうしたときに休めるかどうかは、年収と同じくらい重要です。

転職前は求人票の年収や仕事内容ばかり見ていましたが、実際に家族を持つと、休みやすさや代替体制の大切さを実感します。

司法書士から企業法務への転職は可能。ただし早めに動いたほうがいい

司法書士から企業法務への転職は可能です。

法律の基礎知識や、難関資格に合格した学習能力を評価してくれる企業はあります。

ただし、司法書士資格を持っているだけで簡単に採用されるわけではありません。

特に企業法務が未経験の場合、年齢が上がるほど、企業側は即戦力を求めるようになります。

自分も、新卒4年目の時点で「未経験転職なら今がギリギリかもしれない」と感じて動きました。

もちろん、何歳なら絶対に無理という話ではありません。

ただ、「もう少し司法書士事務所で経験を積んでから」と先延ばしにしても、その経験が企業法務で評価されるとは限りません。

企業法務に興味があるなら、転職するかどうかを決める前に、まず求人を見て、自分の経歴で応募できる企業があるか確認したほうがいいと思います。

求人を見ることや、転職サービスへ相談することは、今すぐ退職することと同じではありません。

今の自分がどのように評価されるのかを知るだけでも、今後のキャリアを考える材料になります。

まとめ:資格にキャリアを縛られなくていい

司法書士資格を取ったからといって、一生司法書士事務所で働く必要はありません。

資格はキャリアを縛るものではなく、選択肢を増やすためのものです。

自分は、20代を閉鎖的な環境だけで過ごすことへの危機感と、家族を守れる働き方を実現したいという思いから、企業法務への転職を選びました。

8社に応募して、内定は1社。

その1社が第一志望でした。

運が良かった部分も大きいと思います。

ただ、応募しなければ、その1社に出会うこともありませんでした。

今の司法書士事務所に違和感がある人も、すぐに退職する必要はありません。

まずは企業法務の求人を見て、自分の経験がどのように評価されるのかを知る。

必要であれば、法務や士業の転職に詳しいサービスへ相談し、応募できる求人や、今の自分に不足している経験を確認する。

そのうえで、今の事務所に残るのか、別の事務所へ移るのか、企業法務へ挑戦するのかを決めればいいと思います。

資格を取った後のキャリアは、一つではありません。

司法書士事務所の年収や働き方については、こちらの記事でも実体験をもとに書いています。
司法書士は食えない?勤務2年半の年収と転職のリアル

また、転職先の司法書士事務所を選ぶ際に確認すべきポイントは、こちらにまとめました。
司法書士の転職で失敗しない事務所選び|求人票と面接で確認すべきポイント

コメント

タイトルとURLをコピーしました