司法書士試験に合格して、いよいよ事務所選び。
資格者は不足していますし、「どこかには採用されるだろう」と考えている人も多いと思います。
ただ、ここで適当に事務所を選ぶと、普通に後悔します。
自分が転職した司法書士事務所では、求人票に「賞与年1回・1か月分」「固定残業25時間を超えた分は時間給で支給」と記載されていました。
ところが、実際には賞与が支給されない年があり、25時間を超えて働いても残業代は一切出ませんでした。
繁忙期の残業時間は月80〜100時間ほどです。
求人票を見て自分が想像していた労働条件と、実際の働き方にはかなりの差がありました。
この記事では、自分と同じ失敗を避けてもらうために、司法書士事務所の求人票と面接で必ず確認しておきたいポイントを紹介します。
勤務司法書士の年収や働き方の実態については、「司法書士は食えない?勤務2年半の年収と転職のリアル」で詳しく書いています。
「賞与あり」ではなく、実際の支給額を確認する
自分が見た求人票には、「賞与年1回・1か月分」と記載されていました。
普通に読めば、月給1か月分の賞与が毎年支給されると思いますよね。
ところが、入所してみると、業績不振を理由に賞与が支給されないことが何度かありました。
求人票に「賞与あり」と書いてあるだけでは不十分です。
面接では、最低でも次の3点を確認したほうがいいです。
・直近3年間の賞与支給実績
・実際に支給された金額または月数
・賞与の算定基準
「業績による」「個人の評価による」という回答だけで終わった場合は、もう一歩踏み込んで聞いてください。
「昨年度、入所1年目の資格者には実際にいくら支給されましたか?」
ここまで具体的に聞けば、ある程度の実態が分かります。
賞与は年収に直接影響します。
月給が多少高く見えても、賞与が出なければ、年間で受け取る金額は一気に低くなります。
求人票に書かれた「賞与あり」という言葉だけを見て安心してはいけません。
固定残業代は、超過分が本当に支給されているか聞く
自分が応募した求人では、月給に25時間分の固定残業代が含まれており、それを超えた時間については時間給で支給すると説明されていました。
しかし、実際には25時間を超えても、残業代は一切支給されませんでした。
繁忙期には月80〜100時間ほど残業していたので、求人票の記載と実態にはかなり大きな差がありました。
固定残業代が設定されている求人では、次の点を確認したほうがいいです。
・固定残業代は何時間分か
・固定残業代はいくらか
・基本給はいくらか
・超過分はどの単価で計算されるか
・超過分が実際に支給された実績があるか
・残業時間はどのように記録しているか
制度の説明だけでなく、「実際に支給されているか」まで聞くのがポイントです。
「25時間を超えた分は支給します」という回答だけでは、自分が見た求人票と同じです。
「直近で25時間を超えた社員には、実際に残業代が支給されましたか?」
このくらい具体的に確認していいと思います。
想定年収ではなく「保証される年収」を聞く
求人票には、幅を持たせた想定年収が書かれていることがあります。
ただし、その上限額をそのまま受け取れるとは限りません。
賞与や残業代を含んだ数字であれば、実際の年収は大きく下がる可能性があります。
だから面接では、次のように聞くのがおすすめです。
「初年度に最低限保証される年収はいくらですか?」
「その金額には、賞与と残業代が含まれていますか?」
「賞与がゼロ、残業がゼロだった場合の年収はいくらですか?」
これを聞けば、かなり実態に近い金額が見えてきます。
自分の場合、事前に聞いていた年収は約400万円でしたが、実際の初年度年収は約360万円でした。
この40万円の差は小さくありません。
「おそらく400万円くらい」「残業代を含めればこのくらい」という曖昧な説明ではなく、何が保証され、何が変動するのかを分けて確認するべきでした。
1年目だけでなく、2年目・3年目の年収も聞く
初年度の条件だけで事務所を決めるのも危険です。
入所時の給料が悪くなくても、数年間ほとんど上がらない事務所があります。
自分が働いていた事務所では、年収約360万円からスタートし、基本的には毎年月給が3万円ずつ上がる仕組みでした。
月給だけを見ると、それなりに昇給しているように見えます。
ただ、賞与や残業代が安定して支給されないため、年収全体では伸びにくい構造でした。先輩社員を見ても、年収600万円程度で頭打ちになるイメージでした。
面接では、次のように聞くといいと思います。
「未経験で入所した場合、1年目と2年目の想定年収はいくらですか?」
「入所3年目、5年目の資格者は、実際にどの程度の年収ですか?」
「昇給額はどのように決まりますか?」
「資格手当や役職手当はありますか?」
求人票のモデル年収より、実際に働いている先輩社員の年収推移を聞いたほうが参考になります。
そこで明確な回答が返ってこない場合は、少し警戒したほうがいいと思います。
面接に所長が出てこない事務所は慎重に判断する
自分の面接には所長が出てきませんでした。
対応したのは現場の社員で、面接自体もかなり形式的なもの。その場でほぼ採用が決まり、労働条件については転職エージェント経由で説明を受けました。
当時は「スムーズに決まって良かった」と思っていました。
でも、今振り返ると、事務所の経営者と一度も話さずに入所を決めたのは危なかったと思います。
小規模な司法書士事務所では、所長の考え方が給与、評価、働き方、事務所の雰囲気に直結します。
その所長が面接に出てこないということは、こちらも経営方針や人柄を確認できません。
少なくとも、入所を決める前に一度は所長と話し、次の点を確認したほうがいいです。
・今後どのような事務所にしたいのか
・資格者に何を期待しているのか
・給与や賞与をどのように決めているのか
・どのような業務を任せる予定なのか
・独立希望者をどう考えているのか
・社員が長く働ける環境を作る考えがあるか
所長が多忙で一次面接に出られないこと自体はあると思います。
ただ、内定承諾まで一度も会えないのであれば、自分なら慎重に判断します。
転職エージェントの説明だけで決めない
自分の場合、労働条件の説明は主に転職エージェント経由でした。
エージェントを利用すること自体が悪いわけではありません。求人票だけでは分からない情報を確認してもらえますし、条件交渉を任せられるメリットもあります。
ただ、エージェントの説明だけで安心するのは危険です。
最終的に自分を雇用し、給料を支払うのは司法書士事務所です。
入所前には、口頭やエージェント経由の説明だけでなく、次の条件を書面で確認したほうがいいです。
・基本給
・固定残業代の金額と対象時間
・固定残業時間を超えた場合の扱い
・賞与の有無と算定方法
・昇給の時期と基準
・想定される業務内容
・休日出勤の有無と手当
・試用期間中の条件
・初年度に保証される年収
説明が曖昧な場合は、労働条件通知書などの書面で示してもらいましょう。
転職エージェントから聞いた内容と、事務所から提示された書面の内容が違う場合は、内定を承諾する前に確認するべきです。
給与について聞いても、不採用を恐れなくていい
面接で給与や賞与について細かく聞くと、「印象が悪くなるんじゃないか」と心配する人もいると思います。
自分も当時は、あまり細かく聞かないほうがいいと思っていました。
でも、今なら普通に聞きます。
司法書士として転職する人の中には、ある程度の社会人経験を積んでから試験に合格し、キャリアの中盤以降で業界に入る人も少なくありません。
そこで最初の事務所選びを間違えると、数か月から数年を失うことになります。年齢や家族、収入などの事情によっては、そこからキャリアを立て直すのが簡単ではない人もいると思います。
現に、自分と同じ時期に入所した人は、事前に聞いていた労働条件と実態の違いに耐えられず、わずか2か月で退職しました。
本人に能力がなかったわけではありません。
入所前に実態を知る手段が少なく、求人票や説明された条件を信じて入るしかなかった。その結果、短期離職という経歴まで背負うことになってしまいました。
だからこそ、面接の段階で遠慮する必要はありません。
司法書士業界は人手不足です。
1年目と2年目の想定年収、最低限保証される年収、賞与の支給実績、残業代の支給状況。
これらは、働くうえで当然確認すべき条件です。
まともな事務所なら、質問しただけで不採用にはしないと思います。
もし、この程度の確認をしただけで露骨に嫌な顔をされたり、不採用になったりするのであれば、むしろ入所しなくて良かった可能性があります。
入所後に「聞いていた条件と違う」と気づいて短期間で退職するより、面接時点で確認したほうが、応募者と事務所の双方にとっていいはずです。
採用されることをゴールにするのではなく、その事務所で数年間働けるのかまで考えて選ぶべきだと思います。
面接でそのまま使える質問集
最後に、自分が今から司法書士事務所の面接を受けるなら、実際に聞く質問をまとめます。
給与について
「初年度に最低限保証される年収はいくらですか?」
「その金額に賞与と残業代は含まれていますか?」
「2年目、3年目には、どの程度の年収になる想定ですか?」
賞与について
「求人票には賞与年1回・1か月分とありますが、直近3年間の支給実績を教えてください」
「入所1年目の資格者には、昨年度いくら支給されましたか?」
「賞与額は、どのような基準で決まりますか?」
残業代について
「25時間を超えた残業代は、実際に支給されていますか?」
「繁忙期の平均残業時間はどの程度ですか?」
「残業時間は、タイムカードなどで客観的に記録していますか?」
昇給について
「毎年の昇給額は、どのように決まりますか?」
「勤続3年、5年の資格者の年収例を教えてください」
「年収が上がるためには、どのような役割や成果が必要ですか?」
働き方について
「休日に本人確認などの業務が発生することはありますか?」
「休日出勤が発生した場合、代休や手当はありますか?」
「有給休暇の取得状況を教えてください」
全部を機械的に読み上げる必要はありません。
ただし、自分にとって重要な条件については、遠慮せず確認したほうがいいです。
まとめ:求人票の言葉ではなく、数字と実績を確認する
司法書士事務所を選ぶときは、「賞与あり」「残業代支給」「昇給あり」という言葉だけで判断しないほうがいいです。
確認するべきなのは、実際の数字と支給実績です。
・賞与は昨年度いくら支給されたのか
・固定残業時間を超えた分は、本当に支給されているのか
・1年目、2年目の保証年収はいくらなのか
・先輩社員の年収は、勤続年数とともに上がっているのか
・休日出勤はどの程度あるのか
・所長は社員の給与やキャリアをどう考えているのか
入所前に聞きづらいことほど、入所後にはもっと聞きづらくなります。
資格者が不足している今、こちらが事務所を選ぶという意識も持っていいと思います。
条件について具体的に質問し、できる限り書面で確認する。
それでも判断が難しい場合は、司法書士業界に詳しい転職サービスを利用して、事務所の離職率、残業の実態、過去の入社者の評判など、求人票に載らない情報を確認するのも一つの方法です。
転職サービスに登録したからといって、必ずそこで転職する必要はありません。
まずは自分の希望条件を整理し、複数の事務所を比較する。そのうえで、納得できる職場を選ぶことが大切です。


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